2019年2月25日月曜日

ゴルゴダの丘に月は昇る。

ピアノの発表会


ステージのことを
「ゴルゴダの丘」と表現したのは、
ロシアを代表するピアニストの一人、エミール・ギレリス。

「ゴルゴダの丘」とは、
イエス・キリストが磔にされた場所・・・


日曜日。
一年に一度のピアノの発表会がありました。


ピアノソナタ第14番嬰ハ短調


今回、私が演奏したのは、
ベートーヴェン作曲「ピアノソナタ第14番嬰ハ短調」第一楽章(「月光」)。

憧れの一曲・・・

ようやく、ここまで辿り着いたかと、
先生に楽譜を頂いたときは、喜びで胸が一杯になりました。


練習に練習を重ね、
発表会当日も家を出る直前まで弾き続け、
会場では膝に楽譜を広げて、心を整えようと深呼吸。






「今年は落ち着いて弾ける」・・・と、思ったのですがね。

結果から言うと、
今までで一番 酷い出来でした。


集中が途切れて、完全に手が止まってしまったのです。


凍り付く会場・・・
沈黙ならば、ここまで恐ろしい思いをしなかったのでしょうが、
とてもショッキングなことに、とある老人に嘲笑され、ヤジを飛ばされてしまいました。


その老人は社会的地位が高く、地元では著名な人物なのですが、
私以外の奏者に対しても、馬鹿にしたような笑い声を上げ、
「こんな曲は嫌いだ」と文句を言い続けていました。

そんな戯言に心を乱される私は、まだまだ未熟。

なのですが、
私にとっては、演奏するにはとても辛い環境でした。

弾き始めてすぐに選曲の文句を言われ、
ミスタッチには惜しみなく注がれる嘲笑。
そして、手が止まってしまうと、大笑い。

もう、どうやって演奏を再開し、
弾き終えたのか記憶が曖昧なくらいです。
地獄を見た、と思いました。




発表会終了後、見ず知らずの女性が私のもとに駆け寄り、
「外野のうるさいのは気にしちゃダメよ。とても綺麗な音だったんだから」
と、言葉をかけてくれました。

それまでずっと我慢していましたが、
「ありがとうございます」を言い終えないうちに落涙してしまいました。


とても辛い経験でしたが、
ゴルゴダの丘にも月は昇ったと、思いました。