2018年3月30日金曜日
晴れやかに、さようなら。
長野県長野市にある公会堂「蔵春閣(ぞうしゅんかく)」。
2018年3月31日をもって、
50年の歴史に幕を下ろすこととなりました。
天空を突き刺す、要塞のような外観。
この堅牢なファザードが好きで、
息子を連れて度々 撮影に訪れていた場所なだけに、
閉館してしまうのがとても残念です。
見学者が少なくなるであろう夕方を見計らって、
息子と一緒に最後の撮影に行ってきました。
竣工は1967年。
現在は公民館別館として、市民の交流の場に利用されていますが、
かつては結婚式場やダンスホールとして活用され、
長野市きっての華やかな社交の場でした。
玄関を入って階段を上がれば、
瀟洒なシャンデリアが下がる大ホールが見渡せます。
私たちが訪れた時、
大ホールではオシャレな若い方たちが何やら準備中・・・
なんと、閉館日である明日(3月31日)、
開館当時の蔵春閣を偲びながら、
かつてのように結婚披露宴が執り行われるそうです。
ステージにはバンドセットも。
蔵春閣最後の披露宴。
どんなに華やかなことでしょう。
壁画のタイル一枚一枚にも、
50年の歴史が刻まれています。
まるで・・・
一日一日を積み重ねて生きている、
人の人生そのもののようです。
この建物の中で、特に私のお気に入りなのが、
スタイリッシュな階段室。
階を示す文字盤も素敵です。
下から見上げた時と、
上から見下ろした時とでは、
同じ階段室とは思えないほど違う表情を見せてくれます。
上階では、
結婚式場であった当時の品々が特別に展示されていました。
神前式だったようです。
窓から見渡せる、長野市街の大パノラマ。
普段は閉鎖されている、
かつての新郎新婦の控室も見せて頂きました。
新婦側の控室。
屏風も当時のものです。
こちらは新郎側。
室内には入られませんでしたが、
古びた中にも 結婚式の晴れやかさを偲ぶことが出来ました。
ところで、
この蔵春閣の一番の見どころは・・・
建物の屋上に設けられた、野外音楽堂です。
安全面や騒音問題などから、
閉鎖されてしまった音楽堂ですが、
かつてはクラシックだけでなく、ロックバンドのコンサートも開かれたそうです。
長らく閉鎖されていましたし、
私たちが訪れたのは日も傾き始めた夕方とあって、
野外音楽堂を見ることは永遠に無いだろうと諦めていたのですが、
偶然にも知り合いの職員の方とバッタリ。
「ご案内しますよ!」と声をかけて頂き、
嬉しいことに見せて頂けました。
ご厚意がとてもありがたかったです。
本当に・・・
50年前の建築物とは思えない斬新さ。
閉館してしまうのが残念でなりません。
ですが、
最終日に結婚披露宴が開かれ、華やかに幕を下ろすことが出来るのは、
それだけ蔵春閣が長野市民に愛されてきたことの表れでしょう。
理想的な別れ・・・かもしれません。
さようなら、蔵春閣。
長野県長野市 東之門町
「蔵春閣」(ぞうしゅんかく)